第149回芥川賞受賞作の『爪と目』(藤野可織著)を読んだ。
著者の藤野さんは1980年生まれだから、33歳くらいでしょうか。
2013年9月8日時点でのAmazonレビューを見ると、、、、こりゃヒドイ。37件のレビューがあって、評価は5段階中の2.6になってます。レビュー内容としては、女児目線で継母について「あなた」という語り口調で表現された技法に対する批判と賞賛、陰鬱で中身がないというストーリーに対してのこき下ろしが大半かな。
読み終わった感想としては、ほぼレビューに同感。最終的にスッキリしないし、盛り上がらないからね。だけど、読んでいる途中で続きが気になったし、読み進めさせられる文章力はさすがと言えると思う。そりゃあ石田ナントカとか山田何某って、設定の面白さやライトな文体で楽しませるエンタメ作家に比較すれば、当然読みづらいしつまらないけど。
でも世の中がそっちばかりに傾いたら大変だし、そもそも芥川賞自体が娯楽に対する賞じゃなくて、純文学を対象にしているわけだから。賞をとった作品イコール面白い、みたいな構図は単純に成り立たないんだろうね。それだったら直木賞受賞作を読んでいたほうが余程しっくりくると。
本当に芥川賞が分かっている人たちはAmazonレビューなんか見て読むか読まないかを決めたりしないだろうからレビューの質がどうであれ、大して影響はないのだろうと思う。
ただ、純文学が好きな人って斜に構えてて、しかも暗いイメージあるよね。ぼくが好きな「村上春樹」とか「山田詠美」とか「宮本輝」とかも純文学に入るのかと思うと、決して人のことは言えないんだけど(笑)
そんなぼくが保証するのでアテにならないかもしれないけど、「爪と目」は独特の「あなた」という表現技法と、じめっとしていて後味が悪いという純文学らしい世界観のある作品で一読する価値があると断言できます。
表面的にユカイで面白い読書じゃなく、たまにはこういう心を抉るような文章を読みたくなる。こうゆう本ってなぜか時間が経っても忘れられないし、何かが心に引っかかって残っていくんじゃないかと思う。その蓄積が人間としての教養とか深みにつながっていくと思っています。