山田詠美著『ぼくは勉強ができない』

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ぼくの高校時代のバイブル的な本。久しぶりに読み返した。高校までは推理小説とかライトノベルなんかを読んでいたので、この辺からガラッと趣味が変わった気がする。
きっかけはNHKFMの青春アドベンチャー。この番組が好きで、高校生の頃は毎日聴いてたなあ。ていう、インドア人間ですけど。

検索したら、ちゃんと続いてた! 青春アドベンチャー。
取り上げる本によるけど、毎日15分間ずつ本の内容を耳で聴けるって素晴らしい番組。朗読じゃなくて、ちゃんと役として読んでくれるし。時には豪華俳優が出演したりもしてて、NHKってたまにこうゆう良い番組つくるんだよね。
最初はこの前にやってたミュージックスクエアって音楽番組を聴いてて、そのままかけてたのを聞いていただけだったんだけど。その音楽番組も流行りの曲からマイナーな曲まで、リクエストに応えて一曲丸々流してて良かったんだよなあ。こっちはまだやっているんだろうか?

さて本の話に戻ると、タイトルの通りの青春小説。「勉強はできないが女にモテる」自由人な雰囲気の高校生の時田秀美くんが恋や友人関係で悩むという。ただ、この秀美くんが悩みに酔い痴れるタイプじゃないのがいい。
本質的なところをズバリと言ったり、言われたり。著者が女性なので女性目線な感じもあるけど、少女漫画みたいに夢見がちなこともない。もっと現実的で、ある意味では高尚な内容といえるかも。

たとえば、秀美くんの考えは基本的にこんな感じ。
しかしね。ぼくは思うのだ。どんなに成績が良くて、りっぱなことを言えるような人物でも、その人が変な顔で女にもてなかったらずい分と虚しいような気がする。女にもてないという事実の前には、どんなにたいそうな台詞も色あせるように思うのだ。変な顔をしたりっぱな人物に、でも、きみは女にもてないじゃないか、と呟くのは痛快なことに違いない。

そんな「普通」じゃない高校生の秀美くんが主人公の話が短編でまとめられているんだけど、一番最後に番外編として載っている小学校時代の話である『眠れる分度器』がかなり深い。
「そんなつもりじゃないのが一番悪い」ってフレーズは、どこで読んだんだったかなあなんて思ってたんだけど、この本だったか。
何度も読み返してたけど、10年以上経てば細部は忘れているもんだ。それでも今のぼくの中心に近いところの考え方がここにあるような気もする。

民主主義の原則である多数決を受けて、「民主主義なんかくだらねえや」と言える小学生。さらに、「前ならえなんてくだらない」と言える小学生の秀美くんが素敵。
30歳になった自分は、秀美と対峙する大人代表の奥村先生に近くなっているのかもしれない。わからないものを誤魔化して、その場しのぎで切り抜けることを覚えると本当に退化していく。
なんだか高校の頃とは違った部分でドキッとさせられた。

他にも昔読んでた本を読み返すのも面白いかもしれないなあ。

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