ストーリーは、ずっと大好きだった女のコに酷い振られ方をした男の子が、チョコが大好きなその女のコを振り向かせようと単身フランスに行ってショコラティエとして修行して、日本でお店を開くというどうしようもない話。
しかも、日本に帰ってきたら肝心の女のコは別の人と結婚したのに、それでも追いかけ続けるという実はとっても気持ちの悪い男の子の物語。
一応、主人公は美形ということで描いているから許容されているんだろう。ところどころの駆け引きはそれらしいポイントもあるけど、この主人公は現実的にはこんなにモテナイのでは・・? ・・少女マンガ的にはそんなのよくあることか。
でも、この人の漫画は結構グッとくるところがチラホラある。
ちょっとネタバレていくけど、
主人公の爽太くんが想い人のサエコさんとうまくいかない間にいちゃついてた加藤えれなというモデルがいたが、サエコさんとうまく行きはじめた途端にえれなに対していい加減な扱いをしてしまった爽太くん。
そこで悩んでいる爽太に、同僚で友人のフランス人・オリヴィエが、こんなことを言っている。
「僕のせいかな。僕が最初にソータとエレナのこと「セフレ」って呼んだから。ほんとは二人がフツーのカップルだってことはわかってたよ。でも冗談でも名前をつけたら名前のとおりになるよね。もし僕がエレナのこと「カノジョ」って呼んでたら、ソータはゆうべエレナを裏切らなかったかもしれない。名前って大事だよね」(第7巻にて)
これ、すごくない? たかが少女マンガ、されど少女マンガって思った。名づけるとその通りになる。心理学的に言うところのラベリング。これは本当のことで、現実でも大いにありえる。オリヴィエすげーな。
ストーリー自体は7巻でサエコさんが家出して爽太くんのところに転がりこんで急展開ってな感じになってる。ふつうにハッピーエンド的にはえれなだけどね、きっとそうすると話の流れ的にはサイテーなパターンなんだろう。そこはエンターテインメントとして楽しむところだったり。ところどころに転がっている要素を拾い集めるとドキっとさせられる。
■年上の有名なショコラティエ六道に出会った爽太くん。心の中で思う。
「俺、今一瞬安心した。10歳上なら仕方ないって思った。10歳上なら負けても仕方ないって・・・。その時点で勝負に負けてるだろ。俺あと10年でこんな風になれるか?」
「なにがライバルは自分だよ。俺みたいなピヨピヨのペーペーはまず他人と戦わなきゃだめだろ。いっぱい傷ついてへこんで、悔しがらなきゃいけないんだ。そうでなきゃチョコレート王子になんかなれない」(第2巻)
■爽太の妹・まつりちゃんと付き合っているオリヴィエがつぶやく
「まがさすっていうか、そんなつもりなかったのに急にイラッとして投げ出しちゃいたくなる時ってあるよね。根気強く頑張れば幸せになるはずのレンアイを悪魔が時々スキをついて捨てさせようとするんだよね」
「悪魔は地獄にもいないしまつりちゃんの中にもいない。他の男でもない。僕の中にいるんだなって思ったよ」(第6巻)
この人の本はほかに『放課後保健室』ってのを読んだことがあるけど、そっちの方が個人的には引き込まれる設定だと思う。最後まで読むと、いろいろ矛盾というか、無理のある設定だったなと感じるけど、似たような他のマンガがない。だから、余計に強く印象に残るんだろーね。
現実離れした暗めの話が嫌いじゃないのなら放課後保健室はかなりオススメ。
失恋ショコラティエは、なんだかんだ言いつつマンガ好きは結構みんな大好きなんじゃないだろうか。